ミックスボイスの必要性とは?
「ミックスボイスとは?」の質問が繰り返される日本
ここ数年のレッスン生の傾向を見ると、日本では2016年頃からまたバンドスタイルの音楽に人気が戻ってきているようで、それに伴い「バンドのボーカルやってます!ミックスボイスってやつを教えて下さい!」というレッスンオファーを頂くことが増えてきたように思います。
そういうケースに多いのが、その方のこれまでの音楽経験として『日本のバンド曲のコピーやカバーは散々やってきたが、欧米のR&Bなどのジャンルの英語楽曲はほとんど歌ったことが無い』というケースです。
こういった場合、まずは『発声』の基礎的な部分から一つ一つ丁寧にレッスンするところから始め、それが出来るようになってから本題のミックスボイスに関わるエクササイズに入っていく、、、
という流れが定石なのですが、今回は発声の基礎的な説明は割愛し『ミックスボイスとは?』そして『ミックスボイスって本当に必要なのか?』という原点回帰とも言える部分をテーマに沿ってお話ししていきたいと思います。
そもそもミックスボイスは必要なのか?
このセクションのタイトル『ミックスボイスは必要なのか?』の問いに対しての結論的な回答は『あなたが様々な曲を全てうまく、そして長期間にわたって歌い続けたいのであれば、絶対に必要です』ということです。
ミックスボイスの概要については、既にサイト内の別記事『正しいミックスボイスの出し方と感覚(2015年初出)』でミックスボイスについて色々と解説していますので、ここではその必要性と理由を具体的にいくつか挙げてみます。
1.音域を広げる助けになる
ミックスボイスはヘッドボイス(頭声:ファルセット)とチェストボイス(胸声)を混ぜることで、聴いている側には低音域から高音域まで声区の境目(喚声点)がシームレスに繋がって聴こえるため、事実上「広い音域」を声区の切り替えなく自然に滑らかに歌うことが出来ます。
2.音色のバリエーションが圧倒的に増える
ミックスボイスを習得することで、最小で最弱な響き(ピアニッシモ:pp)から太く大きく強い響き(フォルテシモ:ff)まで音量・音圧のコントロールが自由自在になり、邦楽にありがちな「地声と裏声を忙しく切り替えて歌う」という歌唱と比べると、より多彩な音色と表現で歌えるようになります。
3.声帯を健全に保つことができる
ミックスボイスを練習することは、声帯やその周辺の「発声に関わる筋肉群」をバランスよく鍛えることになります。それにより『声の安定性が向上』『長時間の歌唱における声帯等の疲労度の軽減』につながります。 そして、しっかりと「正しいミックスボイスの使い方」を習得することで、歌う際の声帯の負担も減らし、健全な声帯の状態を何年も長く維持することが可能になります。
4.表現力の向上につながる
ミックスボイスは、「音色のコントロール」「音量の大小」の自由度が圧倒的に増すので、歌詞の表現力を豊かにするためには非常に重要な要素になります。声の響きの強弱や、ヘッドボイスとチェストボイスの混ぜ具合を変化させるなど、楽曲の音の高低差を正確に歌うだけの単調な歌唱ではなく、「声を響かせる位置を前後にコントロールさせる」など圧倒的に表現のバリエーションが豊富な歌唱が出来るようになります。
ミックスボイスがもたらす大きな可能性
ミックスボイスの必要性について解説してきましたが、ミックスボイスがボーカリストにもたらす可能性がいかに大きいものなのかがわかって頂けたと思います。ミックスボイスをマスターすることは、ただテクニックを磨くことがだけが目的ではなく、声帯を守りながら豊かな表現力を手に入れるための重要な手段です。
日本の音楽シーンでは、最近のバンドスタイルの再燃とともに、再びミックスボイスへの関心が高まっています。自分の音楽活動の中でミックスボイスを実用することで、自分の声を最大限に活かし、長期にわたって健康な状態で歌い続けることができます。
これからミックスボイスを学ぼうとしている方も、すでに取り組んでいる方も、継続的な正しい指導と練習を通じて、自分の声の可能性をさらに広げていってもらいたいと思っています。
正しいミックスボイスの習得によって、あなたの歌が、より豊かで力強いものとなることを心から願っています。
タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino