あなたのボイストレーニングのゴールは何処ですか?

現在のインターネット上の「ボイストレーニング」に関する様々なブログ記事や動画サイトを拝見する中で、個人的にですが、少々残念に感じるところがあるのです。

私の主観的な受け止め方かもしれませんが、ネット上にアップされる記事や動画等の傾向を見ると、

「〇〇ボイスの出し方」 というようなものや

「高い声はこうやって出す」 みたいなもの

「ベルティングボイスはコレ!」 というような感じで

エクササイズ種目や発声テクニック的なものを解説する、もしくはそれらの方法をレクチャーしている記事や動画は溢れるほど存在し、その内容も素晴らしいものも多く、毎日のように増え続けているのに、 「その発声を歌う際にどう当てはめるのか?」 という一番肝心な「最終ゴール」をテーマにした記事や情報はなかなかお見かけしない。

少なくとも、私には未だ見つけることが出来ていないのです。

私が想像するに 「ボイストレーニング」というキーワードでネット検索をされる方の殆どは、

「もっと歌が上手くなりたい」 とか 「〇〇みたいに歌えるようになりたい」 とか 「英語の曲を上手く歌えるようになりたい」 とか とてもシンプルな理由だと思います。

実際に私がレッスンを担当させて頂いてる方々も 初回レッスンの際にレッスンを受けようと思った動機を伺うと、 皆さん結論的に

「もっと歌が上手くなりたいから申し込みました」

という理由を口にされます。

当たり前な理由であり、ごく自然な動機だと思います。

そう!皆、

「今より歌が上手くなりたいからボイストレーニングを受ける」

のです!

だからこそ、ボイストレーニングをしていく上で、 私たちが絶対に忘れてはいけないのは、

「歌唱テクニック(お手本となる既存のシンガーの歌唱上の声の操り方)について」

「歌唱ディレクション(正しい発声を歌う時にどこでどう応用すれば良いか)」

というような

「身につけた発声を歌唱にどうフィードバック(反映)させるのか」

なのです。

歌唱ディレクションについて初めて耳にする方もおられるかも知れないので、少し解説をしておくと、ボイストレーニングにおいての歌唱ディレクションとは、 たとえば、

「この曲のサビの部分はもう少しエッジサウンドを乗せて」とか

「安定してサビに入れるように、Aメロの歌い終わりはもっとチェストをしっかり出して」とか

「そこの「ア」の声は口を横に開かずに、もっとソフトパレットを上げて出せばハッキリ聞こえる」とか

「このメロディーラインはヘッド気味のミックスで歌うという別の表現もあるよ」というような感じで、

その人が正しい発声によって出せた声の「声質」や「持ち味」を、より良い形で歌に当てはめるアイデアと方法を教え、上手く当てはめられない場合は、当てはめ易くなるエクササイズをしてあげ、歌えるようにしてあげる。

つまり、ディレクションという言葉通り、その人の歌を完成させる為の指示、指導をすることです。

このような

「発声スキルを歌唱にフィードバックさせる(歌唱ディレクション)指導を受ける」

という行為は、ネット上の記事を閲覧する、デモンストレーション動画を視聴するだけでは、物理的に不可能でしょうし

「その発声を歌う際にどう当てはめるのか?」

というような事をテーマにしようとしても、コンテンツの作りようが無いのではないかと思います。 (相互通話状態のオンラインレッスンも、受講者側がリアル形式のマンツーマンレッスンを受け慣れている方でなければかなり困難だと思います)

ボイストレーニングにおいて 最も大事なことは 以前よりも上手く歌えるようになること。

これ以外にボイストレーニングのゴール設定はないのです。

誤解を恐れずに言えば

「ボイストレーニングは勉強ではなく、訓練である」

「知った、解った、という事に価値があるのではなく、出来るようになる事に価値がある」

という事です。

実際のレッスンで上記のような発声を軸とした歌唱ディレクションを行えば、その場で歌の内容はみるみる良くなって行きます。

そして、その歌は自分だけのお手本となるのです。 (ここまでやって初めて「ボイストレーニングした」と言えるのです)

しかし、素晴らしいお手本が出来上がったとしても、再度一人で同じ歌い方が出来きないままなら、 ボイストレーニングの成果があったとは言い切れません。

一人で何度歌っても出来るようになるための解決法は

  1. 歌唱ディレクションの通りに一人で歌えるようになるまで反復練習する事
  2. 何曲もディレクションしてもらう事

この2つです。

この2つは「知った、解った」にかかる時間と比べれば、はるかに膨大な時間がかかる行為であり、場合によっては「忍耐」が必要です。

しかし、この2つの反復練習はボイストレーニング本来の目的である

「歌が上手くなる」「魅力的な歌声で歌える」

を実現するために外せない「当たり前」のレッスン項目です。

もし、あなたが今 「発声練習ではチェストボイス、ミックスボイス、ヘッドボイスは出るけども、そのままの声で歌うと変な歌い方になる」 という状態であるなら?

それは、 まだ上手にその声を扱えていない。

つまり、 反復練習が足りていないだけ、です。

メロディーと歌詞をコピーするだけで終わるのではなく、 お手本である歌い方(正しい発声による歌唱)もしっかりコピーすれば良いのです。

これを何曲も何曲もやれば、以前とは比べ物にならない程の歌が歌えるようになります。

昔から言われている「見習い手習い」という言葉そのままです。

反復練習と言うと「大変そう!」と思いがちですが、ドラム、ベース、ギター、キーボード、パーカッション、サックス、などなど、全ての楽器陣も、それぞれの楽器を初めて手にした頃から当たり前のように楽しみながらやっている事です。 ※音質やニュアンスまでコピーして自分のものにする、俗に言う「完コピ」と言われるものです。

そう考えると、やはり 「ネット上の記事の閲覧」や「動画の視聴」だけで「本来のボイストレーニングの成果を得る」というのは、どこか無理があると思うのです。

たしかに色々と調べる事で学べることは沢山あります。

しかし、それはあくまでも「予備知識」「裏付けの確認」でしかなく、トレーニングに当てはまる行為には至らないのではないでしょうか。

ボイストレーニングというものの本質は

「歌が上手くなる」「魅力的な歌が歌えるようになる」

その実現の為の指導であり、その指導を直接受ける取り組みです。

ボイストレーナーが目の前でリアルタイムにディレクション的指導をする。 その環境に身を置くことが、本来の成果が出るボイストレーニングです。

決して、発声のメカニズムや発声の仕組みを知る(聞きかじる、見よう見まねで試してみる)ことではありません。

「発声」についての情報通で満足できるのか?

ボイトレ上手なだけでいいのか?

発声練習のスケールに合わせて声を出す時にだけハイトーン(E4以上)が出ればいいのか?

発声練習の時にだけミックスボイスが出ればいいのか?

やはり「出来ることなら歌が上手くなったと実感したい」と誰でも思っているはずです。

今回、私がここでお話ししたような「ボイストレーニングの本来の目的」を思い出された方がいらっしゃったとしたら、一日も早くあなた自身が本当に望んでいるはずの「歌が上手くなった自分」の実現に向けて、原点(正しいボイストレーニング)に立ち戻って頂ければ幸いです。

是非とも自分自身が「ボイストレーニングを受ける目的」を忘れないでいてほしいと思います。

自分はもちろん周囲からも

「えーーーっ!すっごく、歌、上手いじゃん!」

なんて言われることは、誰でも笑顔がこぼれるほど嬉しいものです!

そして、そういう人が日本中にどんどん増えて行けば、日本の音楽シーンも大きく変わっていくと思うのです。

いい歌を歌える上手いシンガーの前では、ルックス重視型のシンガーはかすみます。 これは今も昔も、そしてこれからも変わらない万国共通のセオリーです。

皆さんの「歌が上手くなりたい」を叶えるために、動画情報や解説文ではない、フェイス トゥ フェイスで指導を引き受ける私達ボイストレーナーがいるのです。

ボイストレーニングに取り組まれる方は、せっかくなら「知ってる」だけで留まらず「歌える」を目指して、充実したボイストレーニングにして欲しい、と心から願っています。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino