今も私がロサンゼルスに行き続ける理由は…

今回はこれまでを振り返りつつ、徒然なるままな感じ且つ、「発声スキル上達の集約的なコツ」の部分などを書かせていただこうかと思います。 少々長くなりますが、どうぞお付き合いください。
ロサンゼルスの某トップトレーナー(大人の事情?で某とさせて頂きます 笑)にボイストレーナーという生業のきっかけを頂いて22年。 ロサンゼルスで活躍するボイストレーナー「ビリーパーネル」と出会って11年。
過ぎてみれば「10年」という単位の時間経過も
「あら?もう10年?」
「えっ?もう20年??」
という感覚です。
「ロサンゼルス ボイストレーニングツアー」と銘打ったボイトレ強化レッスンツアーを、ビリーパーネルと出会った翌年から始めましたが、それも気がつけば10年続けてきました。
思い返せば、
「通常の国内でのレッスンだけでなく、ロサンゼルスの世界標準レベルのボイストレーニングを、プロアマ問わず生で体験させてあげたい!」
という限りなくお節介気味な想いからスタートしたロサンゼルス ボイトレツアー。
平均年1回(今年は2回でした)わざわざこちらからロサンゼルスにタプアの生徒たちと共に出向いていき、ビリー氏から直接、生徒一人一人の個別レッスンをしてもらう。 そして、私達トレーナーも毎回ビリーからトレーナーとしての強化レッスンや様々なレクチャーを受けさせてもらう。
それをずっと10年も。
本当にありがたい事だと毎回心からそう思います。
長年、ボイストレーナーとして様々なレッスンを請け負ってきていますが、常に念頭にあるのは
「レッスンを受ける方に如何に大きな成果を得てもらうか」
その考えから 「もっと沢山の日本の人にビリー氏のレッスンを体験させてあげたい」という気持ちで、これまで2回ほど彼を日本にお呼びして、ワークショップ&マンツーマンレッスンというボイストレーニングイベントを開催したことがあります。 たしかに、参加者全員、自分の発声や歌唱のレベルアップを実感され喜んでもらえました。
しかし・・・
ロサンゼルスツアーの参加者の成果の度合いや変化の大きさを知っている私達からすると、どうしても幾分劣ると言わざるを得ない結果でした。
【注意】ビリーパーネルの来日レッスン内容はロサンゼルスでの内容と一切変わらないものでした!誤解なきようにお願いします!
以前、ある方に教えてもらった「太鼓の法則」というものがあります。
「大きく打てば大きく響き、小さく打てば小さく響く」
思い切り砕けた解釈で言い換えれば「同じ料理でも、出前ですませるよりお店に行って食べる方が断然美味しい」そんな感じだと思ってもらえれば良いです。
それらの経験と解釈から、引率する私達トレーナー側にとっては、ビリーパーネルに来日してもらう方が「数十倍もラクだ!」と分かりながらも、わざわざこちらからロサンゼルスに出向いて行くのです。
そして、ロサンゼルスにわざわざ毎年出向くもう一つの理由。
レッスンを受ける方に最大限大きな成果を実感してもらう為には、 ボイストレーナー側のコーチングノウハウやテクニックの質の高さはもちろんですが、
【レッスンを受ける方にも踏まえておいてもらいたい大切なポイント】
があります。それは
「その瞬間に集中する」
この「集中」レベルの解釈には個々ばらつきがあると思いますが、 私がここで言う「集中」は、「もう後がない!このタイミングを逃すともう二度と機会が無いかもしれない!」と言う「覚悟」レベルの集中です。
スポーツの世界でよく言われる 「コンセントレーションを高く維持する」 と同じ意味と思って頂ければ良いです。
それだけに、教える側もレッスンを受ける方に対して 「どうやって高い集中レベルに入ってもらおうか?」 という事をいつも「あの手この手」と考えているわけです(笑)
その一つの結論として
「生徒さん自らロサンゼルスに行ってもらって、千載一遇とも言えるレッスンを受けてもらう」
そうすることで
「生徒さんにとって、限られた時間と非日常的な空間でのレッスンとなり爆発的な集中力を発揮できる」
これが、ロサンゼルス ボイストレーニングツアーをやり続けている最大の理由です。
言わずもがな、 ビリーパーネルのレッスン内容は
- エクササイズの種類
- エクササイズの組み立て方
- 声の導き出し方
- 声を導き出す精度と速度
- 曲に対してのボーカルディレクションのバリエーション
その他、何もかも全てが「今の日本のそれ」とはレベルが違います。 (グラミー賞にノミネートされるシンガーや全米オーディション番組のファイナリストを多数育て上げているボイストレーナーですから、当然と言えば当然です・・・・笑)
ロサンゼルスに行った生徒の全員が
「このレッスンしかない!」
「今、しかない!」
という状態で滞在中のレッスンに臨む。
そうなると普段ではレベルが高すぎて集中力が途絶えてしまいそうなレッスンでも最大限吸収出来てしまう。
普段ではあり得ないほどの声の出方に、生徒さん本人が一番驚き涙することもあるくらいです。
今年のロサンゼルス含め、そんな場面をこれまで数え切れないくらいこの目で見てきました。
そして、 私達トレーナーはそのレッスン内容(洞察の仕方・考え方・教え方)を全集中力を持って吸収します。
この人は今、何を望んでいるのか?
この人が今、伸び悩む原因は何か?
この人は今、何をするべきか?
この人は今…
これらは私がボイストレーナーとして「この人」が今、可能な限り大きな成果を得られるために考えることです。
集中力を高めて、探し、見つけ出し、考えたついたことを目の前の生徒たちにどうやって正しく理解してもらい、実行してもらえるかという部分も「目の前の生徒たち」をよく見て考える。
ロサンゼルスでの研修中も、日本での毎回のレッスン中も、私達トレーナーの頭の中はこんな感じでずっとブレインストーミング状態なわけです。
成長・向上を目指し取り組むのは、シンガー側の生徒さんだけではなく、教える側のトレーナーも同じであって当然。もしくは教える側の向上心は生徒さん以上でなければならないと思うのです。
目指すところに「目指す人」がいる、「目指す人」に真摯に教えを請う
生徒さんにとってとても大切な事であり、 同時に私達トレーナー(教える側)にとっても大事な事だと思います。 私にとってビリーパーネルはまさに「目指すところにいる人」です。
この「目指す対象者」が居るか居ないかという部分は、どんなジャンルでも、取り組む事柄において成長、向上を目指す上で大きな差を生むポイントだと思います。
(私自身のこの20年を振り返っても実感します)
だからこそ、師匠、マスター、メンターと呼べる人を見つけることは重要であり、そう呼べる人と出会い、師事し続けられることは、成長・向上を目指す人にとって最大級に幸せなことだと思うのです。
この記事を読んでくださっている方が
「もっといい歌を歌えるようになりたい」
「もっと発声をうまくできるようになりたい」
「もっと上のレベルの歌を歌いたい」
というような願いを持っておられるのなら、 どうぞ、独学の日々から一日も早く抜け出してください。
私の個人的な体験からの持論ですが
「独学が毒・我・苦になっては意味がない」
と思うのです。 まず最初は「他人を頼らず自力で頑張る」という実行力と意識はスタート段階として素晴らしいと思いますが、全てを独りでやり切ることが出来るような才気あふれる様な人は、万人に一人も居ないと思います。
自分のプレーを冷静にジャッジ出来るというのは達人レベルでしょう。 そのレベルに達するまでは様々な人達の支援・指導があって達成できるものだと思うのです。
本気になれば冷静になります。
冷静になれば真剣に考えれられます。
本気で冷静に真剣に考えれば「目標に向けての最上な道」が見えるはずです。
まさに茶道、武道、芸術における「守・破・離」と言われる法則そのものだと思うのです。
これは人が技術や能力を身につける為の王道だと思います。
あなたが今、独学で頑張り続けた上で、伸び悩む状況にいるのであれば「師を持つ」という次のステージに上がるタイミングが来ていると思って良いでしょう。ステップアップするタイミングが訪れていると思って良いでしょう。
是非、全身全霊をかけて、最大級の集中力を発揮し良い師と出会われ、師の指導のもと、ビクともしないほどの土台(基礎)に支えられた声や歌唱力を体得してください。そして「守・破・離」さながらに、どこまでも高いレベルに向かってあなたの歌の力を伸ばして行って欲しいと思います。
独学から卒業したその先には、今の自分が想像する以上のレベルに到達した自分がそこにはいるはずです。
私もまた来年も我がマスター(師)のもとを訪れ、生徒さん達と共にに素晴らしい成長の時間を過ごせるよう皆さんとともに日々のレッスンとトレーニングに励んでいこうと思います。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino