ヘッドボイスの道は意識改革から

いつの時代も「ハイトーンボーカル」は憧れの的となり、ほとんどのボーカリストは「高い声を出したい」と思います。私も多感な中高生の頃からその憧れを抱き続けて歌ってきました。

しかし、ある時(若かりし10代)

「あれ?R&Bやソウルミュージック、海外のロックスター、ポップスターの高音と日本人アーティストの高音は何か違う!っていうか全く違う!洋楽をコピーしても全部全然似てねー!どうなってんの?」

ということに気づき半ば挫折的な気分になったことを今も克明に覚えています。

20代に入り、当時の音楽仲間たちも、自分たちの声と洋楽アーティスト達の声との違いに気づいていました。しかしその仲間たちの多くの意見は…

「いやいや、彼らとは体格がまるで違うし」
(たしかに大きい人が多いですな)

「いやいや、相手は英語話せるし」
(まぁ、英語圏の人たちなので当たり前)

果ては、「いやいや、アイツら肉ばっかり食ってるし!」
(なんだそれ?)

という感じで、結局、20才を過ぎても、あの厚みと響きがある高声を出したいという願望に対して、解決策どころか違いの原因(理由)さえ見つかりませんでした。

そして時は流れ1995年夏、有り難いことにロサンゼルスにて某トップトレーナーからマンツーマンレッスンを受けることが出来ました。その時に、やっと長年の未解決案件であった「海外アーティストたちのハイトーン」の全貌を知ることができたのです。

それが「ヘッドボイス」

まずは発声の基本的な概念が当時(今から20年以上前)の日本の発声トレーニングで学んだものとは全く違いました。

その内容を大まかに言うと、

  1. まず、声の音域種別にはチェスト・ミックス・ヘッドの3つが存在する。
  2. そして、全てはノドを開いた状態(オープンスロート)でのチェストボイスありき。
  3. チェストのまま引っ張り上げて音階を上昇するのではなく、低音域から中音域に差し掛かる切り替えポイント(1st.ブリッジ)からミックスエリア(頚椎辺りの後頭部エリア)に共鳴させるように音像を移行する。
  4. 中音域のミックスから高音域への切り替えポイント(2nd.ブリッジ)で後頭部から頭頂部まで(ヘッド)の共鳴に移行させる。

この一連の流れを無段階(音のつなぎ目が聞き取れない状態)で声を出し、4の状態で出している声がヘッドボイスである。

という感じでした。

しかし、いつも個人的に思うことですが…発声を解説文にすると非常にわかりづらい(汗)

と言うか、ボイストレーニングとは本来、生徒が出した声をトレーナーが耳でジャッジしてリアルタイムで修正していくというものなので、実際の音声や体の内部の動きについて、文章化しようとすればするほど、こちらとしては、読む側の人は「結局よくわからない」「そんなすぐに出来ない」と思わないだろうか?と気になって仕方ないです。

その違和感を感じつつも、話出した責任を果たすべく、敢えてヘッドボイスについて続けます!

とにかく、上記の内容がヘッドボイスの出し方の基本的なことになるのですが、

「絶対的条件として、常にノドは締め上げない。アゴも舌も力まない」

というチェスト・ミックスの発声と共通の部分があります。

そして、上記の概念に沿ってエクササイズするならば、まずはリップロールから始める。

さらに常に気をつけなければいけないのは、

「どんな高音になっても、大声(ラウド)にしない」

ということです。最初は音域を広くしようと思わずに、

「すべての音域を同音量に整えよう」

とされると良いです。

上記の手順でエクササイズに取り組んでも出来るだけ高い音を出そうと意識すると、大抵の方は音が高くなるに従ってどんどん大声(シャウト)になっていき、発声もヘッタクレも無くなった状態になります。

とにかく

「鼻歌レベルのボリュームで良いので、全音域のボリュームを一定に整える」

からスタートすることをオススメします。

そして、あなたがシンガー(を目指す人も含む)であるならば、忘れてはならないことがあります。

それは、

「どんな曲を歌うためにヘッドボイスを出すのか?」

「曲(フレーズ)それぞれに対して、ヘッドボイスの強弱をどう付けていくのか?」

という事です。

きっと、これがあなたがヘッドボイスという声をマスターしようとする根本的な理由だからです。

しっとりとしたR&Bバラードでいきなりハードロック調の高音圧で硬質なヘッドボイスなんかは使いようがありません。逆に、テンポが速いハードロックの曲に合唱団のソプラノパート的なヘッドボイスは求められないでしょう。

そう!ヘッドボイスと一言で言っても、バリエーションがあるのです!

ただ単に「高音を出したい」と言っても、「どんな曲のどんなフレーズの高音域を歌うのか?」によって、ヘッドボイスにブレンドするチェストやミックスの響きの割合いが違います。

ちょっと今回のテーマから外れた余談になりますが、「ミックスボイス(ボイスミックス、ミドルボイスと表現する場合もある)」の名称の所以は、『チェストボイスの共鳴とヘッドボイスの共鳴を混ぜた(ミックスした)声』という事です。

ヘッドボイスもこれと同じで「どんな響き(共鳴音)を出すのか?」 を指した名称であり、けっして「高い声」という意味だけを指した名称ではないのです。(※ ヘッドボイスの響きを出せれば、結果として高音域は広がります)

  • 透明感と柔らかさのあるヘッドボイスを出したいのであれば、エッジサウンドをほとんど使わずミックスボイスの響きからストレートに後頭部から頭頂部にかけての響きを主体にする(さらにソフトにしたいなら頭部に偏らせファルセットレベルにする)
  • 音圧の強いヘッドボイスを出したいのであれば、ヘッド・ミックスのエリアの響きだけでなく、幾分かチェストの響きやエッジサウンドを混ぜる(さらに音圧を強くしたい場合は腹圧からのベルティングも活用する)

大雑把に分けてもこのように2種類になり、表現したいフレーズによってどんな声質を選ぶかで、そのブレンド加減が変わり、バリエーションの数も増えるわけです。 このようにバリエーションがあるがゆえに「ヘッドボイスはコレ!」と一つにまとめる事自体、根本的に無理があるのです。

また、このバリエーションは一つの曲の中でも、パートやフレーズによって使い分けるのです。

「歌が上手い」とされるシンガー達はこのバリエーションの使い分け方がチェストもミックスもヘッドも絶妙なわけです。

その絶妙加減の例として 今、パッと思いつくお手本になるシンガー達をいくつか挙げてみます。 よろしければチェストからのミックス、ミックスからのヘッド、という音質の混ぜ方繋ぎ方に耳を傾けて聴いてみて下さい。 (※ 表現テクニックとしてわざと音を鼻で響かせる箇所が多々出てきます。ミックス・ヘッドの響きと鼻に当てた響きとの違いを聴き分ける練習にもなるので、興味のある方は是非そこも意識して聴いてみて下さい!)

【Brian McKnight - Back at One】男性シンガー

【Charlie Puth - Attention】男性シンガー

【Ariana Grande - Baby 】女性シンガー

ヘッドボイスを単体で理解しようとしたり、ヘッドボイスだけ?を身につけようとする方が混乱を招きかねないことがお分り頂けたでしょうか?

チェストボイス、ミックスボイス、ヘッドボイス、と敢えて3種類それぞれに分けてお話ししてきましたが結論は、 『チェスト・ミックス・ヘッドは同じ発声法の上に成り立つ音域種別の名称である』 という事です。

つまり、単体だけマスターしようとするよりも、根幹となる正しい発声法を身につけようとする方が、結果としてヘッドボイスが出せる、使いこなせるようになるには早道です。

すでにチェスト・ミックス・ヘッドのレッスンを受けている方に対して、習得ポイントとして付け加えるならば、

『常にアゴもノドもリラックスさせオープンスロートをキープすること』

『爆音系の声の出し方(ラウド)をしない』 ですね。

皆さんの発声上達の何かの参考にして頂ければ嬉しいです。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino