ヘッドボイスは何種類もあるって知ってましたか?
【正しいヘッドボイスを知るVol.2】

ただ単に「高音を出したい」と言っても、
「どんな曲のどんなフレーズに対するヘッドボイスなのか?」
それによって、ヘッドボイスにブレンドするミックスやチェストの響きの割合いは違います。
※「ミックスやチェストの響きの割合」の意味合いについては、このコンテンツの『謎のミックスボイス』の章をお読み頂ければご理解頂けると思います。
大まかにヘッドボイスの響きの種類を言えば、
【柔らかい響きのヘッドボイス】
■透明感と柔らかさのあるヘッドボイスを出したいのであれば、ブレス(吐く息)の圧を強めずエッジサウンドを避けてミックスボイスの響きからストレートに後頭部から頭頂部にかけてブレスによる咽頭内の響きを主体にする(さらにソフトにしたいなら頭部に偏らせファルセットレベルにする)
【強い響きで前に押し出されるヘッドボイス】
■音圧の強いヘッドボイスを出したいのであれば、幾分でもブレスの圧を上げて、ミックスエリアとチェストエリアの響きを混ぜ込み、エッジサウンドをヘッドエリアで鳴らす
大雑把に分けてもこのように2種類になり、音質の加減次第でその数は増えるわけです。
ミックスサウンド、チェストサウンド、エッジサウンド、ブレス圧の混ぜ方によって響きに違いが生まれ、その音色の呼び名「ファルセット」「ハーフファルセット」「ミックスヘッド」「ベルティングトーンのミックスヘッド」などなど、通称名称、個人的な呼び方も含めるとかなり細かく分類されます。(※海外ではこれくらい細かく音色を吟味して歌を歌うのが普通の感覚だということです。)
このようにいくつかのバリエーションがあるがゆえに「ヘッドボイスはコレ!」と一つにまとめる事自体、根本的に無理が出てくるのです。
また、このバリエーションは一つの曲の中でも、パートやフレーズによって使い分けるのです。
「歌が上手い」とされるシンガー達はこのバリエーションの使い分け方がチェストもミックスもヘッドも絶妙です。
その例として思いつく「お手本的なシンガーと楽曲」をいくつか挙げてみます。
是非「チェストからのミックス」「ミックスからのヘッド」という響きの混ぜ方、つなぎ方に注意して聴いてみて下さい。
【Brian McKnight“Back at One”】男性シンガー
【Charlie Puth “The Way I Am” 】男性シンガー
【Ariana Grande - Baby 】女性シンガー
いかがでしたか?
「どこまでがチェストボイスで、どこからがミックスボイスになって、どこでどのヘッドボイスが鳴っているのか?」
なんて全部きれいに区分けできるほど聴き分けられましたか?
出来なくて普通です。逆に明確に区分けできる箇所があったとしたら歌の演出法として声のコントラストをつけている箇所か、失敗してブレイク(音の領域のつなぎを上手くできなかった)してる場合です。
つまり上手いシンガーはつなぎ目を分からないように(スムーズに領域を移行させる)歌います。リスナー側はそこを「上手いなぁ」と評価するのですから、例にあげた3人の歌の「領域の継ぎ目」が分からなくて普通です(笑)
ですから、ヘッドボイスを単体で理解しようとしたり、ヘッドボイスだけを身につけようとするほうが「いつまでたっても楽に広い音域(ハイトーン含む)を使いこなして歌うことが出来ない」という状況に陥ってしまう理由がお分り頂けたでしょうか?
チェスト・ミックス・ヘッドの響きは全部一つの発声法の中にある響き(音色)なので、その発声法の練習に取り組むことがヘッドボイスを使いこなせるようになるための正しい方法です。
さらに付け加えると、
ヘッドボイスは「高音域の発声」なので、無理な出し方・響かせ方をしてしまうと声帯、咽頭、耳を傷めてしまう可能性が高いです。
ですから、我流練習と言われる「参考動画、参考資料を見聞きしながら、こんな感じかなぁ?と自己判断で声を出すだけ」の練習、お試し発声は危険だと思います。
間違った発声練習を繰り返すと、それが声帯を痛める悪い発声の癖をカラダに付けてしまいます。
私個人がこれまでに経験したことで言うと、
私(当アカデミー)のレッスンをお申込み頂く方の中には、私のもとに来るまでに、ボイトレ関連の参考動画や資料を使った練習を繰り返し、いつしか「間違った自己流練習」の繰り返しになっていた事で、私のレッスンを受ける時には既に喉が壊れた状態(声帯結節、声帯ポリープなど)になられていた、という方は、この二十数年ほどの間に何人もおられます。
当然その方にはレッスンはせずに、その場で信頼おける音声外来のドクター(正しい発声を熟知されていてご自身も正しい響きを出せるドクター)を紹介してお帰り頂くしかありません。
怖がらせるつもりはありませんが、本当にヘッドボイスはそれほど間違いやすく、その原音を支える声帯はそれほど「か弱い」パーツだということを忘れて欲しくないのです。
だからこそ、プロ、アマかかわらず、「独学にこだわらず」「我流、自己流に固執せず」素直に正しく「師」に付き、理にかなった正しいトレーニングに取り組んで頂きたいと思っているのです。
ヘッドボイス・ミックスボイス・チェストボイスなどなど、全ての発声を正しく身につけ歌で使いこなすためには、
目の前にトレーナーが居て、
声を出しているあなたにその場ですぐに
「ボリューム大きくなってるよ!」
「息が吐けてないよ!」
「ちょっと息が多すぎるよ!」
という感じで、あなたが正しい発声をキープし続けられるに、その都度修正してくれるシチュエーションを確保することが非常に重要です。
誤解を恐れずに言えば「定期的な対面式のレッスン」は全ての安全面を考えれば「発声および歌唱の練習」の必須条件です。
少しでも出し方を間違うと喉に大きなダメージを与える「ヘッドボイス」。
その響きをつかむ上で「リアルタイムでその都度、指導者からの修正をあおぐ」ことは、あえてしつこくお伝えするくらいとても重要なのです。
だからこそ、今回「ヘッドボイス」について文章化させて頂いたわけです。
安全のためにも実際のリアルのレッスンで「お手本の声と響きを聞きながら自分が上手にマネするにはどうすればいいのか?」の指導を受けることが正解です。
もしあなたが「安全に本当のヘッドボイスの響かせ方を自分のカラダ(声)で実体験したい」と思われるのであれば、当アカデミーの体験レッスン(発声診断)でも実体験していただけます。
是非とも、安全な環境下でのボイストレーニングに励んで欲しいと思います。
そして、
正しいヘッドボイスの響きを習得するために、少しだけあなたの中に抱いている「ヘッドボイスについての意識(固定概念?)」を切り替えておく必要があります。
意識、概念、イメージ、それを少し修正するだけで出せなかった声が簡単に出ることはレッスンの中でよくよくあるのです。
その部分について、次の【本当のヘッドボイスを知るVol.3】でお話ししたいと思います。
ではまた、次の『Vol.3』で。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino