【英語の歌の上達法 Vol.4】上唇を上げる
-前歯は見せてイイんです!-

すでに【洋楽を歌おう】のカテゴリーをはじめ「声のテクニック」と銘打ったこのコラム内の記事をいくつかお読み頂いた方はお気づきだど思いますが、良い発声の重要なポイントは「下アゴ側のパーツ(喉、舌、下アゴ、等)に力みを入れないように、力んで声を出さないこと」です。

これは正しい発声の基本条件であり、特に洋楽独特の声質と発音を出す為には重要です。

普段のマンツーマンおよびグループレッスン、ワークショップでも、下アゴ側パーツ(喉、舌、下アゴ、等)の力みを取る為のレッスンやレクチャーをするだけで、随分と「カタカナ発音」から脱却できる方が多く出ます。

とは言え、 下アゴ側の脱力だけでは、洋楽アーティストのような歌声に近づくにはもう一歩が必要。

今日はその「もう一歩」の部分についてお話ししたいと思います。

下アゴの脱力に加え、このポイントも出来るようになると、洋楽はもちろん邦楽(日本語の歌)も、そして中・高音の発声もさらに上手くなります。

それでは本題へ。

洋楽を歌う際、多くの方々を悩ませるのが「R」の発音だと思います。 これは舌の力みを取ってあげることでかなり解決するのですが、以外に「Ah-(アー)」「Yee(イー)」「Yeah-(ヤー)」など母音の発音が『ナンカ違う!』と気になる方もおられると思います。

例えば、 よくある『Hey yeah~ yeah~~~』 というようなR&Bのフェイクラインのフレーズがあったとして 同じフェイクラインでも海外シンガーの歌声と日本人シンガーの歌声を聴き比べると、結構明確に違いが分かります。
※もちろん日本人シンガーの方でも上手に出来ている方も沢山おられます

その理由は母音発音の鳴りの違いであり、さらに具体的に言えば「音の抜け」の違いです。

そして、その違いを生み出しているのは

上唇の動かし方の違いです。

特に「ア、イ、エ」の上唇の動きにポイントがあるのです。

日本語の発音では「ア、イ、エ」の母音を口にする際、「上唇の動き」に対する意識は殆ど生まれないと思います。

どちらかと言えば、「上唇はほぼ動かず:鼻の下は伸びたまま」という状態が多いと思います。

しかし、英語の場合(特に歌を歌うとき)発音のために上唇を大きく動かし使うのです。

どれくらい上唇を動かすかというと、 『AH(ア~)』と声を出すとすれば上の前歯が半分以上は見えるくらい上唇を上げます。

イメージは「頬骨ごと真上にあげる」という感じです。

海外シンガーが歌っている動画で彼らの頬骨周辺や上唇の動きを見てもらえれば、日本人シンガーと比べるといかに上の前歯が見える状態が多いのかが一目瞭然です。

海外シンガーで「鼻の下が伸びたまま上の前歯を見せず」に歌っているシンガーはほとんどいないと思います(笑)

  • どういうふうに動かしているのか?
  • どれだけよく動いているのか?

海外シンガーの歌っている映像を見ればすぐにその違いはお分かりいただけます。

さらに、海外アーティストが歌う映像を見ながら、その表情、口の動きをマネしようとすると、どれだけ唇や頬骨周辺の筋肉を動かし続けているかが、より実感出来ると思います。

洋楽(英語の歌)を発音も発声もスムーズに歌うための4つ目のポイントは

「上唇や頬骨の筋肉を自由に上下に動かせるかどうか」です。

そのための練習方法のひとつを挙げるとすれば 『ウ、イ、ウ、イ、ウ、イ、・・・』の反復練習です。

左右の頬を指で押さえたまま 『ウ、イ、ウ、イ、ウ、イ、・・・』と30秒ほどやってみれば、普段の「う」「い」と言う時と違う口の動きを実感出来ると思います。

あまり違いが実感出来ない場合は、 「ウ」で唇を出来るだけ前に突き出し、 「イ」で唇を上下の前歯が見えるように縦に開く (口が横に開き過ぎない:両頬を押さえている指を押し戻さない) という動きを意識してやってみてもらえば分かると思います。

ポイントは「上唇や頬骨の筋肉を自由に上下に動かせるかどうか」です。

やってみればお気づきになると思いますが、 最初は数回もやれば

  • 上唇がツライ!
  • 頬骨周辺が引きつる!
  • 両頬を押さえている指を押し戻す様に口が横に開いてしまう!

という感じになるかもしれませんが、 それだけ上唇も?骨周辺の筋肉(表情筋)も使っていなかったということです。 しかし、それを感じられれば鍛える価値は大です。反復練習によって洋楽発声の上達の伸びしろを期待できます。

この章のタイトルである「前歯は見せてイイんです!」をどれだけ上下の前歯を見せて言えるか? これもお試し頂ければエクササイズになるかも知れません(笑)

冗談はさておき、 洋楽がカタカナ発音になりやすい方の多くは、

口を開けようとした際に「唇」も「表情筋」も「口腔内」も全て横に広げ過ぎ

なのです。海外アーティストの口元の動きと鏡に映る自分の口元の動きをよく見比べて下さい。動かし方のお手本は彼等です。

「唇、口腔、表情筋」これらは全て基本は縦(上下)に開くのが、発声のための基本中の基本であり、上唇や頬骨を上げることを意識すれば、力みを入れずに喉も口腔内も全開に出来るのです。

日本人が苦手とする「頬骨周辺の動き」を正しく動かすことによって、

  • 上唇がめくれ上がる様に持ち上げやすくなる
  • 上唇と頬骨全体が持ち上がり上アゴ側で作られた声の響きがこもらない
  • ストレートに声が前に飛び出す(音の抜けが良くなる)

洋楽(英語発音)独特の『Ah~,Yee, Yeah』はもちろん「R」などの発音も力むことなくハッキリと出せる様になるのです。

また同時に、この上唇側の正しい動きは、最近非常に多い「鼻にかけた声の出し方」による滑舌の悪さの改善にも大きく役立ちます。
(例:カキクケコ、ガギグゲゴ、マミムメモ、ナニヌネノなどの滑舌改善)

上唇や頬骨の筋肉を快活に動かせるようになれば、洋楽の発音全般がとても良くなります。

そして、もしあなたが上級レベルのシンガーであれば『Ah、Yee、Yeah、Wah、Wow』などの発音を多用するフェイクフレーズも、さらに洋楽シンガーに近づける事が出来ます。

是非、上唇をしっかり持ち上げ「鼻の下を伸ばしたままのカタカナ英語の歌い方」から卒業し、海外シンガーばりに「上の前歯を全開に見せて」響きのある声と豊かな表情で洋楽を歌って下さい。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino