シンガーvsミュージシャン?(後編:1.8倍増量!)

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「今回は、ちょっとタイトルと内容が噛み合っていないんじゃない?」

という声が耳に入ると、ついつい書く手が止まってしまいがち。。。。

みたいな感性が、自分の中に殆ど見当たらないタプアヴォイスアカデミー・オーナーの牧野です。

 

前編に続き、後編も歯に衣を着せることも忘れた感、満載で、実例も含めてお話ししていきますね。
ここ前編はこちらからどうぞ>

『カラダが自分の扱う楽器』
と言いましたが、まだ漠然としたイメージにしか捉えられないかもしれないので、前編のおさらいをしておきます。

 

「声はどうやって作られるのか?」
を正しく理解すればもう少し明確なイメージになると思います。


声が出る仕組みは、まずノド(喉頭部:Voice box)の中にある声帯に息を吹き付けることで振動音を出します。この時点ではまだ「小さな振動音」でしかなく声とは言えません。その振動音が咽頭腔、鼻腔、(場合によって胸部)などで共鳴し口腔内の形状での共鳴と相まって「声(言語)」として口から発せられます。


稚拙な例えで説明すると、

スイッチを入れた電動歯ブラシの振動音だけでは小さな音ですが、それをそのまま空のバケツに放り込んだらどうなるでしょう?

うるさくて、周囲に迷惑がられます(笑)。

バカバカしい例えかもしれませんが、
「振動音=電動歯ブラシ」と「共鳴音=空のバケツ」と考えればご理解頂けると思います。

つまり「声帯の振動音だけでなく共鳴音をいかに膨らませるか?」ということに意識を向けることが「音量・音圧」をアップさせるポイントになるのです。
少しは『カラダが楽器』のイメージはクリアになったでしょうか?

 

さて、ここから後編の本筋に入ります。

ボイストレーニングを真剣に受けた事がある人ならわかると思いますが、トレーニング後に若干の疲労感を感じる時があるはずです。
または、うっすら汗ばむという経験をした人もいるかも知れません。

実はそれは正常であり、ちゃんとした発声のトレーニングであれば当然のことです。

【実例:その1】
例えば、よく皆さんから教えてほしいと質問される「腹式呼吸」
(もちろん、発声をする際の腹式呼吸と呼ばれる呼吸の場合です。発声の呼吸に関しての話題はまたの機会に)

レッスンの中で実際に「こうやってみて下さい」とやり方をレクチャーしてみると初めての生徒さんの殆どの方が

「お尻の筋肉にチカラ入るんですがいいんですか?」
「ちょっと足腰がダルくなってきました」
「以外に体力いるんですね」

というような感想を口にされます。
この経験した方は、
「声を出す」という事はノドだけでなく下半身も含めた全身を使う行為
だと実体験で分かっていただけます。

だからこそ、日々のトレーニングの質とメンテナンスに関しても「ノド」の調子だけを整えれば良いわけではないという事なのです。

まさに、カラダが資本です!

 

ここでまた、私が経験した実例をご紹介します。

【実例:その2】
まだ私がボイストレーナーとして駆け出しの頃、ある男性生徒さんがいまして、その方はハードロック系バンドのボーカルでした。

その方の悩みは

・声が細い
・バンドの音に声が埋もれる
・スタジオリハの段階でも息が上がりやすく音程がフラットする

ということでした。

もともと良い声をお持ちな上に、非常に真面目な方で、レッスン後の反復練習も怠ることもなく、1〜2ヶ月ほどでそれなりに成果は出ていました。
でも、どうしても声の細さ、ハードロックに必要なパワフルな声が出し切れなかった。
体型も非常に細く、顔色も常に青白い感じで、如何にも体力不足という状態でした。

そこで私がアドバイスしたことは

『スイミングとかやってみたら?ハードロックは普通以上に体力あった方がいいし!』

ということでした。

その場の彼は「そうですかね〜?」というようなお愛想全開な返答でしたが、真面目な性格ゆえに、早速翌週にはスイミングスクールに通い始めました。

スイミングコーチの指導のもと週2〜3回ペースで泳ぎ始め、カラダのメンテナンスの重要性にも気づき、食事内容も見直しました。

そして、その結果、
たった1ヶ月ほどで別人かと思うほどパワフルな声に変わり、
彼は自分の発声の弱点をほぼ克服したのです。

もちろん、彼の結果の早さと度合いは彼個人の結果であり、すべての方に当てはまるものではないと思います。

しかし、この実例と同様なエピソードは、少なくとも私のレッスン歴の中に数え切れないほどあります。

シンガーの皆さんに押さえて頂きたいポイントは

『カラダの状態は発声の質にダイレクトに関わってくる』

という事実です。

 

もし、あなたが
「もっと歌うときの息が続くようにしたい(息苦しさを無くしたい)」
「もっと声量(音量・音圧)を出せるようになりたい」

という場合、根本的に呼吸が浅い事が多いのです。
肺活量の大小というよりも呼吸する為の動きが小さいのだと思います。

客観的に改善策を考えるのであれば、
ボイストレーニングのレッスン以外に、

・呼吸器系を鍛えるフィジカルトレーニングをする必要があるかもしれません。
・カラダ全身のメンテナンスという意味で睡眠不足を解消することも有効かもしれません。
・肩や首、アゴの凝りをほぐす事が有効かもしれません。
・食習慣の改善も必要かもしれません。

このように改善策の例を挙げると、まるで「アスリート」に向けての内容みたいですよね。

実は、それが正解です!

カラダを使うことは全てそう考えるほうが正しいのです。

 

ミュージシャン達(楽器陣)はみんな自分の楽器を大切に扱い、「上手い」とされるミュージシャンは楽器だけでなく周辺機器の状態までこだわります。
シンガーがノドを含むカラダ全体の状態にこだわる事は別に不思議なことではないのです。

シンガー(ボーカリスト)は
ノドを含めカラダ全体を楽器として
『如何に大事に扱い、理にかなった日常的な反復練習でどう鍛え続けるか』
この姿勢が
「周囲から頭一つ抜きん出たシンガー」
「ミュージシャンを味方につけるシンガー」

になれる大切なポイントです。

シンガー(ボーカル)もキーボード、ギター、サックスと同様に音楽を構成する一つのパートなのだと、
シンガー側もミュージシャン側も互いに認識すれば素晴らしい楽曲や演奏が生み出されます。

そして、シンガーであるあなたが
『カラダという楽器を上手く演奏しよう』
という努力をしていれば、
「おい、ボーカル!歌が聴こえて来ねーぞ!もっとしっかり声出せよ!」
みたいな短絡的なシンガーへの無謀要求はなくなり、
「シンガー vs ミュージシャン」というような稚拙な関係性もなくなると思います。(笑)

ボーカリスト、シンガーの皆さんには
是非ともスペアが無い自分という楽器を奏法を間違えずに日々大切に扱ってほしいと思います。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino


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シンガーvsミュージシャン?(前編)

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レッスンの生徒さんや、その他のシンガー(バンドのボーカルなど含む)からの相談でよくあるのが

「スタジオ練習などでバックの演奏の音量に声が負けて自分の声が聞き取れないんです。」

「バンドメンバーからボーカル聞こえないよって言われるんです」

という感じの内容。

そして大抵は「もっと大きい声は出せるでしょうか?」という質問に変わっていくのがパターンなんですが。。。

 

その大抵の場合の私の個人的な返答として

「そのバンドの演奏を実際に聴いてみないと厳密には言えないけど、試験的にでも一度バックのメンバーに音量を下げて演ってもらってみたら?」

と答えます。

少なくとも私の場合はそうしてきました。
というよりミュージシャンに恵まれていたのか皆なボーカルに合わせてくれる(活かそうとしてくれる?)メンバーばかりでした。

実際に生身の人のカラダだけで、どれくらいの音量を出すことが出来るのか?
当たり前ですが、
「生の声の音量」がアンプやエフェクターで増幅させたロックギターの音量に敵うわけがありませんが、
マイクを通す前の「生の声」を最大限のパフォーマンスで出せていたとしたら
それを基準にバンド全体のバランスを取ればいいわけです。

そして、バンド全体で音のバランスを取ってくれようとしてもまだ声が埋もれるところがあるようなら、そここそが発声の矯正すべきポイントですから、しっかりとそこを意識したトレーニングを積めば良いわけです。
(ちなみに、ミュージシャン側が最初から音量を下げたくないという意見が出た場合について、その原因と対策については、別の観点からのアドバイスになるので私のレッスンの中でしか話してません。。。あしからず。笑)

 

さて、このエピソードには、シンガーにとって
とても大切なことに気付けるチャンスがあります。

ギタリストはギターという楽器を使って音楽を奏でる人
ドラマーはドラムという楽器を使って音楽を奏でる人
キーボード、ベース、サックス、トランペット、・・・・

じゃあ、
シンガー(ボーカリスト)は何を使う?

ここに気付ければシンガーとしてのレベルはかなり上がっていきます。
そして、冒頭でご紹介した相談内容の解答も自ら導き出せるようになっていきます。

重要な部分は、先に記述した
『マイクを通す前の「生の声」を最大限のパフォーマンスで出せていたとしたら』
です。

では、シンガーとして最大限の発声パフォーマンスを出すために、何をどうすればいいか?

いつも私がレッスンで中で
『シンガーはカラダが楽器と考えて』
という言葉があります。

以前の記事のどこかでも書きましたが、
声はノド(声帯を含む喉頭部:Voice box)だけで出しているのではなく、
咽頭腔、口腔、鼻腔、(場合によって胸部)などが共鳴し「声」として口から発せられます。

歌唱などする際は、それに加え
呼吸を司る肺、気管、腹圧をコントロールに関わる背筋群、
それら上半身全体を支えるための骨盤部から下の下半身・・・

という感じで、まさに全身が発声に関わって来ます。

私は個人的に「サックスなどの管楽器を演奏するのと似てるかも」と勝手にイメージしています。

だから、ミュージシャンと同じく、
シンガーは「カラダが自分の扱う楽器」とイメージした方が自然なのです。

後編に続く>

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ヘッドボイスの道は意識改革から


※今回はちょっと長くなります。。。ご了承くださいませ。

いつの時代も「ハイトーンボーカル」は憧れの的となり、ほとんどのボーカリストは「高い声を出したい」と思います。私も多感な中高生の頃からその憧れを抱き続けて歌ってきました。

しかし、ある時(若かりし10代)
「あれ?R&Bやソウルミュージック、海外のロックスター、ポップスターの高音と日本人アーティストの高音は何か違う!っていうか全く違う!洋楽をコピーしても全部全然似てねー!どうなってんの?」

ということに気づき半ば挫折的な気分になったことを今も克明に覚えています。

20代に入り、当時の音楽仲間たちも、自分たちの声と洋楽アーティスト達の声との違いに気づいていました。しかしその仲間たちの多くの意見は・・・・、

「いやいや、彼らとは体格がまるで違うし」
(たしかに大きい人が多いですな)

「いやいや、相手は英語話せるし」
(まぁ、英語圏の人たちなので当たり前)

果ては、
「いやいや、アイツら肉ばっかり食ってるし!」
(なんだそれ⁈)

という感じで、
結局、20才を過ぎても「あの厚みと響きがある高声を出したい」という願望に対して、解決策どころか「違いの原因(理由)」さえ見つかりませんでした。

そして時は流れ1995年夏、有り難いことにロサンゼルスにて某トップトレーナーからマンツーマンレッスンを受けることが出来ました。その時に、やっと長年の未解決案件であった「海外アーティストたちのハイトーン」の全貌を知ることができたのです。それが

「ヘッドボイス」

まずは発声の基本的な概念が当時(今から20年以上前)の日本の発声トレーニングで学んだものとは全く違いました。
その内容を大まかに言うと、
———————————————————
①まず、声の音域種別にはチェストミックス・ヘッドの3つが存在する。
②そして、全てはノドを開いた状態(オープンスロート)でのチェストボイスありき。
チェストのまま引っ張り上げて音階を上昇するのではなく、
低音域から中音域に差し掛かる切り替えポイント(1st.ブリッジ)からミックスエリア(頚椎辺りの後頭部エリア)に共鳴させるように音像を移行し、
④中音域のミックスから高音域への切り替えポイント(2nd.ブリッジ)で後頭部から頭頂部まで(ヘッド)の共鳴に移行させる。

この一連の流れを無段階(音のつなぎ目が聞き取れない状態)で声を出し、④の状態で出している声がヘッドボイスである。
———————————————————
という感じでした。

しかし、いつも個人的に思うことですが・・・・・発声を解説文にすると非常にわかりづらい(汗)

と言うか、ボイストレーニングとは本来、生徒が出した声をトレーナーが耳でジャッジしてリアルタイムで修正していくというものなので、実際の音声や体の内部の動きについて、文章化しようとすればするほど、こちらとしては、読む側の人は「結局よくわからない」「そんなすぐに出来ない」と思わないだろうか?と気になって仕方ないです。

その違和感を感じつつも、話出した責任を果たすべく、敢えてヘッドボイスについて続けます!

とにかく、
上記の内容がヘッドボイスの出し方の基本的なことになるのですが、
『絶対的条件として、常にノドは締め上げない。アゴも舌も力まない』
というチェストミックスの発声と共通の部分があります。

そして、上記の概念に沿ってエクササイズするならば、まずはリップロールから始める。
さらに常に気をつけなければいけないのは、
『どんな高音になっても、大声(ラウド)にしない』
ということです。最初は音域を広くしようと思わずに、
『すべての音域を同音量に整えよう』とされると良いです。

上記の手順でエクササイズに取り組んでも「出来るだけ高い音を出そう」と意識すると、大抵の方は音が高くなるに従ってどんどん大声(シャウト)になっていき、発声もヘッタクレも無くなった状態になります。
とにかく『鼻歌レベルのボリュームで良いので、全音域のボリュームを一定に整える』からスタートすることをオススメします。

そして、あなたがシンガー(を目指す人も含む)であるならば、忘れてはならないことがあります。
それは、
『どんな曲を歌うためにヘッドボイスを出すのか?』
『曲(フレーズ)それぞれに対して、ヘッドボイスの強弱をどう付けていくのか?』
という事です。
きっと、これがあなたがヘッドボイスという声をマスターしようとする根本的な理由だからです。

しっとりとしたR&Bバラードでいきなりハードロック調の高音圧で硬質なヘッドボイスなんかは使いようがありません。逆に、テンポが速いハードロックの曲に合唱団のソプラノパート的なヘッドボイスは求められないでしょう。

そう!

ヘッドボイスと一言で言っても、バリエーションがあるのです!

ただ単に「高音を出したい」と言っても、
「どんな曲のどんなフレーズの高音域を歌うのか?」
によって、
ヘッドボイスにブレンドするチェストやミックスの響きの割合いが違います。

ちょっと今回のテーマから外れた余談になりますが、
ミックスボイス(ボイスミックス、ミドルボイスと表現する場合もある)」の名称の所以は、
チェストボイスの共鳴とヘッドボイスの共鳴を混ぜた(ミックスした)声』という事です。

ヘッドボイスもこれと同じで「どんな響き(共鳴音)を出すのか?」 を指した名称であり、けっして「高い声」という意味だけを指した名称ではないのです。
(※ ヘッドボイスの響きを出せれば、結果として高音域は広がります)
▪️透明感と柔らかさのあるヘッドボイスを出したいのであれば、エッジサウンドをほとんど使わずミックスボイスの響きからストレートに後頭部から頭頂部にかけての響きを主体にする(さらにソフトにしたいなら頭部に偏らせファルセットレベルにする)

▪️音圧の強いヘッドボイスを出したいのであれば、ヘッド・ミックスのエリアの響きだけでなく、幾分かチェストの響きやエッジサウンドを混ぜる(さらに音圧を強くしたい場合は腹圧からのベルティングも活用する)

大雑把に分けてもこのように2種類になり、表現したいフレーズによってどんな声質を選ぶかで、そのブレンド加減が変わり、バリエーションの数も増えるわけです。
このようにバリエーションがあるがゆえに「ヘッドボイスはコレ!」と一つにまとめる事自体、根本的に無理があるのです。

また、このバリエーションは一つの曲の中でも、パートやフレーズによって使い分けるのです。
「歌が上手い」とされるシンガー達はこのバリエーションの使い分け方がチェストミックスもヘッドも絶妙なわけです。

その絶妙加減の例として
今、パッと思いつくお手本になるシンガー達をいくつか挙げてみます。
よろしければチェストからのミックスミックスからのヘッド、という音質の混ぜ方繋ぎ方に耳を傾けて聴いてみて下さい。
(※ 表現テクニックとしてわざと音を鼻で響かせる箇所が多々出てきます。ミックス・ヘッドの響きと鼻に当てた響きとの違いを聴き分ける練習にもなるので、興味のある方は是非そこも意識して聴いてみて下さい!)

【Brian McKnight – Back at One】男性シンガー

 

【Charlie Puth – Attention】男性シンガー

 

【Ariana Grande – Baby 】女性シンガー

 

ヘッドボイスを単体で理解しようとしたり、ヘッドボイスだけ?を身につけようとする方が混乱を招きかねないことがお分り頂けたでしょうか?

チェストボイスミックスボイス、ヘッドボイス、と敢えて3種類それぞれに分けてお話ししてきましたが結論は、
チェストミックス・ヘッドは同じ発声法の上に成り立つ音域種別の名称である』
という事です。

つまり、単体だけマスターしようとするよりも、根幹となる正しい発声法を身につけようとする方が、結果としてヘッドボイスが出せる、使いこなせるようになるには早道です。

すでにチェストミックス・ヘッドのレッスンを受けている方に対して、習得ポイントとして付け加えるならば、
『常にアゴもノドもリラックスさせオープンスロートをキープすること』
『爆音系の声の出し方(ラウド)をしない』
ですね。

皆さんの発声上達の何かの参考にして頂ければ嬉しいです。

タプアヴォイスアカデミー
Takayoshi Makino


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